『戒名の歴史と意義』
戒名とはもともとは、仏教徒となったときに授けられる名前で、本来は生前に授かるものです。しかし現在では、死後に戒名を授けて、仏教徒として葬儀をあげるというかたちが一般的となっています。
それでは戒名というものは如何なる意義を持つものなのでしょうか。
お釈迦様の弟子として成仏の道を歩むことは、「教え」に従うことです。その教えに従うことは、まず「戒律」を守ることから始まるのです。お釈迦様の教えを守ることを約束した信者には、戒律を守る人として、つまり戒法を受け入れた人として、「戒名」が授けられます。
この戒法を伝えるため、先人たちの努力は大変なものでした。正しい仏教を求めて中国からインドに旅をする僧は多かったようですが、途中で命を落とした者も多数いたそうです。日本では、6世紀末に聖徳太子が十七条憲法を定め、仏教精神に基づく政治を進めました。しかし、当時は戒を授けることのできる人(戒師)がおらず、「戒壇(戒を授けるところ)」も存在していませんでした。そこで、正当な戒師を招く必要が生じてきたのです。8世紀に遣唐使として派遣された鑑真によって東大寺に「戒壇」を設け、聖武天皇、光明皇后に戒名を授けたのです。現在のように壇那寺の信徒すべてに戒名が付けられるようになったのは、江戸時代です。キリシタン禁制の実をあげ、その寺の壇家であることの証明として付けられたことから普及していきました。
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